東大航空宇宙休学記 〜もうすぐ卒業だよ編〜
この記事は東京大学航空宇宙工学科/専攻 Advent Calendar 2019 9日目の記事です。
こんにちは、B4の@toyojuni です。朝10時からある卒業設計の諮問準備が終わり、ようやく寝れるかと思いきや今日が学科のアドカレの担当日なのを忘れていました。どうやら僕以前の人は誰も記事を落としていないようなので頑張らざるを得ません。頑張ります。
さて、実はこのブログは連作でして2年前から年に一度、年末に書いては公開しているのですがついに3作目になりました。主旨としては、東大工学部航空宇宙工学科を3年生に上がるタイミングで休学して、友人とベンチャー企業を共同創業するという変な選択をしてしまった人間がどのような末路を辿るのか記録しておくというものです。
👇 こちらが2年前のもの(休学した年度)です。要約すると「俺は大学院には進学しない方がいいんじゃないか…?」と言っています。補足ですがこの学科は9割9分が大学院に進学します。
👇 こちらが1年前のもの(復学し3年生として過ごした年度)です。要約すると「俺は大学院には進学しない方がいいんじゃないか…?」と言っています。サンクチュアリはいい漫画です。
ここから3作目となる本記事です。4年生として今現在過ごしている年度です。要約すると「大学院には進学しなかったよ」と言っています。
まあ結果だけ見ればシンプルなものですが、それなりの出来事と感情の動きというものがあるのできちんと記します。身の振り方に悩んでいる後輩諸氏の参考になれば幸いです。
大学の話
3年生の時に講義を地獄のように詰め込んだおかげで4年生に上がったタイミングで卒業単位には残り2単位ほどとなっており、講義はほぼとりませんでした。航空機運航管理と宇宙科学だけです。
じゃあ4年生ってなにするん?暇なん?となるでしょうが全然そんなことはないです。各自研究室に所属することになり、卒論前半戦(5〜7月)→ 院試(7~8月) → 卒論後半戦(9~11月)→ 卒業設計(12〜2月)とラスボス級の敵が息つく暇もなく襲い掛かってきます。
僕は院試はないのでその分楽でしたが、会社の方が週5フルタイム勤務なので普通にしんどかったですね。休日はほぼ全て卒論作業に当て、発狂していました。卒論は先月末に提出しましたがすぐ卒業設計が始まったので今もしんどいです。
僕自身はレポートの延長(すら怪しい)のような卒論しか書けなかったですが、研究室の先輩方の発表などを聞いているとアカデミアのトップ層の方々はこのような活躍をしているんだなぁということを実感を伴って知れたので研究室に所属できたのは非常に良かったです。(学年が浅いうちから研究室インターンなどをしてる人々すごいなぁと思いました)
しかし、修士の2年間は就活なども考えるとあまりにもすぐ過ぎ去ってしまいそうなので、自制心がないときちんと成果を残すのは難しいんだなというのも研究室に入っての学びでした。(自堕落な先輩がいたという意味ではないです)
また、過去の記事で書いている通り僕はアカデミアから逃げ出す立場の人間ですが、そんな自分にベンチャービジネスの話などを聞きたいという風に言ってくれる人が複数いたのは非常に嬉しかったです。当たり前ですが世界はビジネスとアカデミアの二項対立で存在しているわけではなくグラデーションであり、自分がその中間値で潤滑油のような役割を果たせるのは非常に合理的だなと思うわけです。
自分がまだまだビジネスを語れるような立場じゃないのは自覚しつつ、卒業後もそういった機会は失いたくないなと思いました。友達 is 大事。
会社の話
東大の同期入学である井手康貴に誘われ、2年半前すなわち休学したタイミングでFlattという会社を立ち上げました。toCの「ライブ配信をしながらアパレルを販売できるECサービス」を開発・運営していましたが元々の方針にそぐわない形に最適化を進めてしまったことを理由にサービスをクローズ、ソフトウェアとブランドを売却しました。ちょうど1年前の話です。(色々と日が浅かったので去年のブログには書きませんでしたが!)
そこからピボットし、今年の2月ごろからtoBのサイバーセキュリティ事業を開始しました。事業内容は脆弱性診断とSaaS開発で、社名もFlatt Securityに変更しました。
前事業が若い女子向けのアパレルだったのでめちゃめちゃピボットしたねとよく言われ、実際その通りだとは思うのですが笑、実は会社の「テクノロジーを軸に日本を変えうるレベルの影響力を持つ企業になる」というビジョン的な所はブレていないんです。
そこに共感いただいた株主の皆様から2.2億円の調達も実施しました。
会社の軸はブレていないので僕も特に違和感もなく仕事をしていますし、やればやるほどセキュリティに関しては学びしかないので非常に楽しみながら事業を作っています。さらに強力な仲間も次々にジョインしてくれており、やっていきしかないです。セキュリティエンジニア絶賛募集中です!!あとオンラインマーケやエンジニア採用人事の猛者も大絶賛募集中です。。!!!DMください🙏🙏🙏
休学と成長
自分は身の回りにも休学者が多く、すでに復学した人間もたくさんいますがきちんとみんな社会復帰しているので今後の人生に尾を引くとかはあまり考えなくても大丈夫だと思います。僕も社会復帰できたかは怪しいですが仕事と両立しつつなんとか卒業まではこじつけることができそうです。
ただ、休学をしたからといって多様な選択ができるようになるかは結構微妙です。今の時代は選択肢の多様性が増したように見えて、実はそんなに増していません。インターネットを介しどこにも平等に情報が行き渡り、どのような世界に飛び込んだとしてもそのプロトコルにおいて善とされている領域に人・金が流れ込みます。
それが良い悪いという話ではなく、結局はその大きな流れの中に取り込まれますし、そこに自らの意思で制御できる要素は少ないです。
それゆえに、休学前に時流を読みその流れの中で(もしくはあえて逆張りでもいいですが)成長するという明確な目的を立てておくのは大事です。
成長のポジティブシンキング
しかしその成長はどのように達成するのかという問いが浮かびます。これは休学に限らない普遍的で深遠な問いです。
個人の成長という概念は事業進捗と相似形で、短期的なKPIだけ追っては長期でマイナスになる可能性があります。
例えば学生をしながらベンチャーで働くみたいなのは、若いうちから幅広い経験を積み小さいながらも組織全体を見ているという意味で短期的なKPIを追っている状態だと言えるでしょうが、これが長期のKPIにも繋がっているのか、それとも蓋を開けてみれば学業をおろそかにし専門性を失った器用貧乏が生まれていただけなのか、それはいくら論理的に考えても不確定要素が多くわからず、神のみぞ知るところです。
なので、先ほどの問いに対する結論としては、個人の成長にふさわしい手段は多くの場合事前に予測できず「結果でしか語れない」というなんとも当たり前の形に落ち着きます。しかし、逆にそこを考えても仕方ないのなら我々のやることはひとつ、自分の環境を最良だと仮定して目の前の問いに全力で取り組むだけです。
YOU PLAY WITH THE CARDS YOU’RE DEALT. です。
ただポジティブシンキングをしているだけで何も変わっていないじゃないかと怒られそうですが、合理的な範囲でポジティブシンキングをして無駄な悩みを減らすのは大事なことで、それによって得られた(浮いた)エネルギーは確実に僕らを目標へと近づけるはずです。少しこの文章の論旨からはそれますが、根底の思想はそやさんのnoteと近いです多分。
もちろん、僕が言いたいのは周りを見ずにひた走れということではなく論理的に予測不可能な範囲は悩まずにポジティブな方に考えろというだけことなので、たまには立ち止まって自分のいる環境が良いか合理的に考える機会があって然るべきでしょう。
なんてことを最近は考えていました。おわり。