「強い」ロゴ

KeijiroToyoda
7 min readJan 14, 2020

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自社のロゴを変更することになった。

会社が新しいフェーズを迎えたからそれに合わせてCIを再定義したいだとか、そんな大層な理由ではない。単純に現状のロゴに運用上の問題が生じてきたからだ。ちなみに運用上の問題は主に弊社がtoCからtoBにピボットする上で生じてきてしまったものである。

思えば2年半前の創業時に5時間くらいで作った Flatt のロゴに1年前 SECURITY を付け足し、継ぎ接ぎ状態でこれまでよく頑張ってくれたものだ。

それでも個人的には「強い」ロゴだと思うので気に入っているが、運用上問題があるので変更は仕方がない。これから3ヶ月ほどかけてリニューアルするが、自分のための言語化も兼ねてロゴに求められる「強さ」について書く。

「強さ」とは

「強い」ロゴとはなんであろうか。

ロゴ(およびそのほかのブランド展開物)の果たす役割を僕は「当該ブランドの過去の文脈と未来への意志を適切に顧客に伝える」だと考えているが、そのためにはロゴの製作過程においてブランド文脈&意思を経営陣から汲み取るという上流の作業と、それをビジュアルに落とし込むという下流の作業が適切に行われる必要がある。

しかし、最終アウトプットを外部から見たときに上流工程が適切に行われているかはぶっちゃけわからない。とても綺麗なロゴでもそれは下流がうまいだけで、上流では経営陣の意志の言語化に失敗しているかもしれないし、そもそもそんなにコストを割いていないかも知れない。(失敗はともかく、各社様々な事情があるのでコストを割かないことは当然悪ではない。念の為。

上流工程の評価について強いて言うのであれば、ロゴ起点のマーケティングでビジネス上の成果が出たときは上流工程が成功してると言えるだろう。

前提が長くなってしまったが、評価の難しい上流工程に関する議論はフワフワしてしまって危ういものになると思うので、ロゴの「強さ」はとりあえずビジュアルだけで議論すると生産性があるものになるのではないか、ということを言いたかった。

上流工程に関しては各社リニューアル時にそれぞれのメソッドを公開するだけくらいがちょうどいい。

ビジュアルの「強さ」とは

ビジュアルに関しては古くから学問分野として存在し、様々な評価軸も存在するので議論がしやすいだろう。可読性が高いだとか、オフラインからオンラインまで様々なタッチポイントでその効果を損なうことなく運用可能だとか。

だが永く使われるロゴのビジュアルに関しては突き詰めると一つの評価軸に収斂すると思っている。

それは「時間的にも、空間的にも普遍性を持つ」ということだ。ざっくり説明すると

  • 時間的な普遍性 = 時を経ても色褪せないロゴであること
  • 空間的な普遍性 = 日本中/世界中で通用するロゴであること

という話だ。

そして、この普遍性を達成するためには「ロゴはシンプルに作る」というメソッドが大事である。具体的なオブジェクトを削ぎ落とし、抽象度を高めていくことで普遍性が高まっていくというのは納得してもらえると思う。

シンプルでフラットなロゴがもてはやされるのはデザイナーの手抜きではなく、こういった事情がある。そもそもシンプルに作るからといって作業は楽にはならない。1本の線で表現するからこそ、その線の調整には尋常でない体力を要するものなのだ。

一方で、広く永く使われるという目的でなければこの条件に合致する必要はない。例えば一日限定イベントとかは文字のメタリックな装飾とか、イラスト入れまくるとか、初見でのインパクトを高めることに注力したほうがいいと思う。

まあ、コーポレート・アイデンティティを考えるにあたってはビジネス拡大という大目標があり基本は普遍性を求めると思うので上の条件を追求すると考えて問題ないはず。

独自性

会社のロゴはコーポレート・アイデンティティの代表格です。アイデンティティ、自己同一性ですから自他の区別がつくようにやはり独自性は欲しいものです。シンプルにしたからといって他社のロゴと似たり寄ったりで良い訳がない。

シンプルにしつつも、独自性を出していく。ここのバランス感がデザイナーがビジュアルを作り込む上での腕の見せ所だと感じる。

私の好きなロゴ

最後に自分の好きなコーポレートロゴの紹介をしたい。ビジュアルとしての普遍性と独自性の調和を絶妙なバランスで実現したロゴだ。

キヤノン

僕はCanonユーザーなので、最初から私情はさみまくりだが紹介する。

https://global.canon より

この現行ロゴがデザインされたのは1956年。直球な言い方をすると古臭さだが、流石に時代は感じるし、近いうちに変更なんかもあるかもしれない。

それでも60年以上にわたって人々の愛機で色褪せることなく輝いてるこのロゴの「強さ」は相当のものだと思う。書体が現代のトレンドにあっていないというだけで、線の美しさは圧倒的なものを感じる。

ロゴの変遷や社名の成り立ちに関しては公式が詳しいので参照されたい。

DeNA

https://dena.com/jp/ より

独自性のパラメタにかなり振り切った例。まずもってこんなアイデアが自分では出てくる気がしないのでそれだけでもう脱帽なのだが、それでも全体として美しいプロポーションを保っているのが凄い。

書体でかなり遊びを加えた分、ロゴは#000 or #fff での運用に限って、カラフルなコーポレートカラーは背景色で運用するというのもうまいなあと思う。DeNAの人の名刺もらうと色の違いが楽しいよね。

個人的にはロゴの利用規定を考えるときにアクセスが良いので参考にすることが多い https://dena.com/jp/company/policy/logoguide.html

伊藤忠商事

https://www.itochu.co.jp/ja/ より

トリにもってきた伊藤忠商事、めちゃめちゃ好き。伊藤忠商事のロゴが好きだ!というのを書きたいがためにこのエントリを書いたようなもの。

街中で見かけてここまで印象付けてくるロゴはそうそうないと思う。

画像探してる過程で良い解説を見つけたのでそれ引用しちゃいます。

色はシンプルに一色で、地球を連想させる深みのある青を使用しています。地平線を連想させる曲線のカーブは、グローバルに発展する企業姿勢を現し、末広がりな形が堂々とした安定感を表現しています。また、形だけで一瞬のうちに認識させようと、心理学的な理論にもとづいてデザインされたそうです。形も色も考え抜かれて制作されたロゴであり、ロゴ制作の際に大変参考になるロゴです。

引用元: http://docodoor.net/logo/logo0035m/

まとめ

特に理由がない限り文字は太くしよう、とか色は濃くしようとか、アンカーポイントは減らそうとかそういうtips的な話をしたかった気がするんだけどブログ受けを狙ったせいか全然違う内容になってしまった。

良いロゴ作りましょう。おわり。

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Written by KeijiroToyoda

デザインに多少詳しくて、サイバーセキュリティの仕事をしています

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